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◆Yoshiaki IWASHITA (English Plus Study Abroad: Biological Sciences)

“Yoshi, your presentation yesterday was very good”廊下ですれ違った教授がふと、こんな言葉をかけてくれた。でも、そんな言葉では喜べない。”Are you sure?”とだけそっけなく答えた僕に教授は足を止め、”Yes”と大きくうなずいて去っていった。彼が廊下の角を曲がったことを見とどけて、僕は飛び上がって喜んだ。Leicesterでの1年間で最も嬉しかった瞬間だ。

English Plus Study Abroadコースで9月から始まったSchool of Biological Sciencesでの講義・実習は本当にExcitingだった。Genetics Departmentにはノーベル賞候補との呼び声も高い、犯罪の遺伝子捜査(Genetic Fingerprinting)を開発し、Sirの称号をもらっているProfessorがいる。彼の講演には数百人が入れる教室が満杯になるほどのAudienceが訪れる。もちろん、優秀なのは彼一人ではなく、Genetics, Biochemistry, Cell Physiology & Pharmacology等の各Departmentが週に1度位のペースでヨーロッパ中の有名な研究者を呼んで講演会を開いてくださったり、大学院生が続々とNatureシリーズにacceptされたりと、どの教室も活気に満ちている。当然講義も「今日のスライドに出したfigureは皆さんにコースの始めに配ったhandoutには載っていません。先週のNatureに出た話題ですから」といった調子だ。

そして特筆すべきはその教育への取り組みだ。どのコースも講義、チュートリアル、セミナーの3本柱で成り立っており、ただ講義を聞くだけではなく、小グループでのディスカッション、2000 words程度の小論文、20分程度のpresentationの作成が求められる。そして、それぞれに対してきめ細かいfeedbackが返ってくる。小論文ではA4で10枚以上に上るものを一行一行赤ペン添削してくださる。しかも採点の公正をきすため、複数のチューターが名前を見ずに採点するというスタイルだ。複数のコースの小論文の締め切りが近くなるとかなり忙しいが、あんなに丁寧に添削してもらえると思うと一行たりとも気を抜けなかった。

冒頭の教授は初めてのTutorialで全く付いて行けなかった僕をTutorialの後に呼び出し「君が出来ないのはScienceの力が無いからか?英語力が無いからか?」と問うた。どちらにも自信はあったがそのときの僕には下を向いて”Maybe both”と答えるしかなかった。本当に悔しい体験だった。でもそれは日本の大学でありがちな学生を怒り、けなすためのものではなく、親身になってその後のサポートをするための情報収集だったと思う。その後の僕は彼からの適切な指導もあり、コース終盤のSeminarでついに冒頭の評価をもらうことが出来た。そのSeminarのあとに彼から全員に送られてきたE-mailも粋なものだった「昨日のPresentationはみんなのレベルが高くて本当に驚いた。講義にほとんど出席しない学生の中にも大変素晴らしい発表をした人がいた。そういう人がこの講座の単位を取る能力があるのは明らかだ。しかし、残念なことに毎年試験の出来と出席率には強い相関がある。授業に出なかったという理由だけで単位を落とすのはもったいな過ぎる。残りの講義は是非出席してもらいたい」教育の原点を再認識させてくれるメールだ。

帰国後の僕は休学していた医学部に戻った。Leicesterでの経験が評価されこの3年間で3回英米に短期留学することも出来た。自分自身にとっても非常によい経験になったが、それ以上に、その経験を周囲に伝えることによって、周囲にもよい影響を与えることが出来ていると自負している。数人の後輩の留学を後押しすることも出来た。外国に留学したい、イギリスに住んでみたい、という僕の中学生の頃の夢は終わった。次の夢は海外で得た経験を日本の医学、教育に還元することだ。この夢がかなって始めて、僕の留学は完結する。